映画【ちはやふる ―結び―】の魅力

映画完結編 ちはやふる -結び-

2016年に公開された【ちはやふる】 上の句・下の句。人気マンガの実写化という事でファンも多くハードルが高い映像化かと思われましたが、出演陣の見事な配置に美しい演出・爽やかで普遍性のある青春部活ドラマに仕上がっていて、本当に驚いた作品です。その完結編として-結び- がこの度公開になしました。

最高の”ファンディスク”的作品

この作品は上の句・下の句の続きですので、前作を見ておく、もしくは原作マンガを読んでおくなど、ある程度情報がなければ楽しめません。この作品からいきなり入っても誰が誰だかわからないし共感も難しいです。ですが、上の句・下の句を見てきた人にとってはものすごくうれしいファンディスクのような作品だと感じました。まだあの続きが見れる、最後の1年間を一緒に体験できるというのはとても嬉しい事です。メインはカルタ部の団体戦、後輩もできて、最後の一年で進路や恋や、これまでの思い出や、色んなものが混ざり合う高校三年・最後の1年の何とも言えない空気と、その瞬間しかないキラキラした一瞬を切り取ろうとした作品です。その時間の尊さが大スクリーンから伝わってきて、本当に見ていた時間があっという間に感じるほどです。

輝きを増した演出と演技

2年を経て、本当に一人一人のキャラクターがより洗練されています。本当にこういう青春がそこにあったんだなと思えるほどに。その世界観を強固なものにしているのがアニメーションとスローモーション撮影です。作中で1000年前の様子を描写した水彩タッチのアニメーションは、効果的なアクセントになっています。また前作同様カルタのアクション部分にスローモーションが多様されているのですが、とにかく美しい。俳優陣のどこを切り取っても美しいです。流れる振袖や髪、カルタがとられる様が本当に息をのむような美しい映像に仕上がっていて、この映像だけでも見る価値があるんじゃないかと思うほどです。加えて、ポイントでは激しく、ある場所では静かに、場面を盛り上げるBGMもシーンの美しさを強調していきます。本当に素晴らしい映像作品でした。

1000年先にも届く、かもしれない青春の煌めき

高校生活最後の1年、永遠には続かないかけがえのない時間。過ぎ去った後では懐かしさや寂しさもありますが、ただ終わった後もその煌めきは続いていく、もしかすると1000年先にも届くかもしれない。そんな一瞬をきっと永遠に留めようとした作品です。時間も空間も選ばない、ただ夢中に仲間と駆け抜けて、後輩に繋いだその時間が描かれています。そんな煌めきが、元々原作であるマンガにはあって、マンガ好きからするともっとこう書いてほしいとか、オリジナル部分が引っかかる人がいるのかもしれません。しかしながら原作が持つ要素をうまく咀嚼して映像化されています。一つの青春映画の結末として、これほど美しくまとめられた作品はそうはないと思います。

色々な想いを未来に結ぶ、本当に見事な青春映画です。最高でした。
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貫田 雅剛

ラジオのパーソナリティー・プランナーやイラストレーターとして活動中。RCCラジオ・ラジプリズムの部長。ラジオのこぼれ話から、アニメのリアルタイム雑感、イラスト描いたりWeb作ったり、イベント考えてみたり、そんな色んな情報や、日々のあれこれなどを”なるべく”毎日更新したいと思います。