【語ってみた。】蛍火の杜へ
作品概要
2002年にLaLaDXで掲載された緑川ゆき先生の読み切りマンガ。大人気作品である夏目友人帳の元になったと言われる作品で、同作が人気になった後、2011 年にアニメ映画化されました。そんな作品の魅力をポイントを絞って紹介します!
【あらすじ】 祖父の家に遊びに来ていた6歳の女の子 祖父の家に遊びに来ていた6歳の女の子 竹川蛍は、妖怪が住む山神の森に迷い込む。そこで出会った人の姿をしたギンと出会う。人に触れると消えてしまうギン によって森から出ることができた蛍は、それから毎年、夏になると祖父の家に来た折にギンの住む森へと遊びに行くようになる。
ポイント① 設定以外は至って普通の恋の話
ギンは山神の森に住む人ならざる者、蛍は普通の女の子。ギンは素肌を人に触れられてしまうと消えてしまう。 設定はとても異質なものですが、その中身は至って普通の恋物語です。夏のとある時期にだけ会う事の出来るギンと蛍の恋物語は中学・高校と蛍が成長しても続くとても一途な切ない恋です。ただその切なさは決して叶わない恋ではなくて、 2人とも惹かれあっている恋なのに、一緒にいたいのに夏の間しか一緒に入れない、触れたいのに触れることができない という蛍の気持ちが膨らんでいく過程が切ない作品になっています。
ポイント② 狐のお面に隠されたギンの表情
ギンは常に狐のお面をかぶっています。そのためギンが何を考えて、蛍といる時どんな風な表情をしているのか、知る事ができません。笑顔だったのかもしれないし、そうではないのかもしれない。夏を迎えるにつれて徐々に背丈が近づいてくる蛍をどんな風に見つめていたのか、それも分かりません。そのお面の下に隠された表情を想像させることで、短い作品にも関わらず考察の拡がりが生まれていると思います。また逆にお面を蛍に被せてくれるシーンがありますが、その時の蛍の表情もお面に隠れて分かりません。その演出がとても印象的な作品だと思います。
ポイント③ 最後まで自分からは触れなかった。
ギンに触れると消えてしまう。だけど、蛍にとってギンが大切になるにしたがって同級生と手を触れるのと同じように触れたいと想いながら、最後まで自分から触れるような事はしなかった。ギンが消えてしまう事がなによりも辛いから。最後まで触れそうで触れられない距離を保ち続けた2人の姿がこの作品が美しい理由だと思います。
そんな二人がそれぞれの想いに気が付いて、答えを出そうとしていた時に不意に訪れてしまう最後の時、美しいシーンですが、ひと夏の終わりのような、そんな儚さを感じます。
★まとめ 夏の美しく儚い恋物語
日本の原風景とも思える夏の森の美しい背景に、人が惹かれあいながらも触れられないというもどかしさを軸に、とてもやさしい別れを用意した作品。1時間に満たないとても短い時間ながら心にグッとくる夏に見たい名作の1つです。